あみの日記
・決意
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・面接
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・体験入店
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・キャバ嬢1ヶ月目
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・キャバ嬢2ヶ月目
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・キャバ嬢3ヶ月目
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・・・つづく

【体験入店】

更衣室でお店の衣装に着替えるのだが、これまた、かわいいと思える服がない。
シミがついているものや、いつ洗濯したのかわからないくらいの異臭をはなっているもの。裾の糸がほつれているものなど、目に余るものがある。

しかたなく一番着れそうな服に着替えていると、3人の女の子が更衣室にやってきた。年齢は3人とも19歳前後といったところで、キャバクラ嬢らしいあふぉさが顔ににじみでていた。

「今日、体験入店する亜美です、よろしくお願いします。」

「はぁ〜い」

3人のうちの1人の子だけが反応してくれた。
後の2人は完全に無視している模様。
しかも、一人は獣でも見るような目つきで私を睨み付けている。

・・・・・・・・・恐ろしい!!!!!

なんだか先が思いやられるが、気を取り直して(というか、目をそむけながら)着替えを終わらせ、足早に更衣室を後にした。

店内に入ると、もう20代も後半の私には全くもって相応しくない、トランス系の音楽がガンガンに流れていた。

「あっ、えっと今日、体入ですよね?色々説明しますんで、こっちに来てください。」

面接前に個室に案内してくれたボーイさんに声をかけられた。
体入とは、”体験入店”の略らしく、夜の世界にはその他にも色んな業界用語があるらしい。

「まずですね、お客さんの隣に座って乾杯することからはじまるんで、席についたら、お客さんのドリンクを用意して、亜美さん自身のドリンクを用意します。
こんな風にアイス入れて、このハウスボトルをタンブラーに注いで・・・こうして・・・」




「僕らボーイにオシボリを持ってきてほしいときの合図は、こうね。んで、これが、大きいタンブラー、こっちが小さいタンブラーの合図、これが灰皿の合図ね。あとは〜」

そう言いながら、手でポーズをする。
説明はものすごいスピードだった。いろんなことをいっぺんに5分くらいで説明していく様は、ある意味すばらしい。しかし、説明を受ける側の気持ちにもなってほしいものだ。
早すぎて、手の合図なんかおぼえられないぞ・・・。
不安が増していく中、説明も終わり、待機席で順番が来るまで待機することになった。

その日は平日だったせいか、お客さんの数も女の子の数も割りと少ないらしい。
待機席では、おしゃべりをしている女の子たちは見受けられず、ほとんど皆黙々と名刺を作成している様子。それを見ながら、私自身も名刺を作成しないといけないことを思い出し、ボールペンを取り出すが、何をどう書いていいかわからない。

仕方なく、隣で黙々と名刺を書いている女の子に質問してみた。

「あ〜、名刺ねぇ・・・何でもいいんじゃない?携帯番号とか。」

「携帯番号ですか・・・。あんまり他人に教えたくないんですが・・・。」

「んー、それじゃ、お客さんつかむの難しいと思うよ。」

この世界では、初めて出会ったお客さんをまたお店に来させようとする為に携帯のメールアドレスや番号を教えたり、教えてもらったりして連絡を取り合えるようにするそうだ。
上手く自分に好意を寄せてくれれば、また来てくれて、その上で自分を指名してくれたら、自分自身の収入UPに繋がるらしい。
その為、女の子たちは必死なのだ。

つまり、男女のかけひきみたいなもので、もっと単刀直入に言うと、恋愛系営業というわけか。

水商売というものは、そういうものだということを頭の中ではうっすらとわかっていたような気がしたが、実際にナマのキャバ嬢に説明してもらい、一層現実味を感じたのであった。

しかし、私は、時間給だけ貰えればいいと思っていたので、”必要以上の努力”をしてまでして自分指名のお客さんをつくるだとか、同伴をするだとかはしないと決めていた。
それは夜の商売に足を突っ込む前に自分なりに決めたルールだったのだ。

その旨を話したが、その女のコは、それでは求人雑誌に掲載されている額には全然満たないと教えてくれた。
雑誌にはそれなりの高額時給で掲載しているという。
つまり、夜の業界はほぼ常に人手不足ということだろう。

複雑に思いながら、名刺に何を書いていイやら悩んでいる間、私の左右に座っている女の子が次々と呼ばれてお客さんの席についていく。

とりあえず、空名刺にナマエを書いたところで、私の店名が呼ばれた。

「亜美さ〜ん、次いきますね。」

私はあわてて名刺をポーチにしまいこみ、一度軽く深呼吸した。

「それじゃ、向こうの席の●●ちゃんご指名のお客さんにつこうか。
亜美さん、業界初めてだから最初は誰かの指名のお客さんにつけるから、安心してね。」

お客さんに女の子を振り分けする担当のボーイさんは丁寧そう言った。
なんだかとても頼りがいがあって、無知な私をやさしく包んでくれるかのような言葉でそう言った。

他の女の子を指名しているお客に付くということは、その女の子が他のお客さんと指名が重なっているということで、他のお客さんを相手している間の時間、寂しくさせないように楽しませる役目を”ヘルプ”と言うらしい。
つまり、私はしばらくの間、指名が重なっている女のコのヘルパーになるわけだ。

昔から人助けが大好きだった私。サポートの仕事なら喜んで引き受けちゃう私。
だから、ヘルパーなら大歓迎だった。


「はじめまして、亜美です!こんばんは!」

ペコリとお辞儀をし、そのお客さんの横に座る。

その●●ちゃんのお客は、メガネをかけた30代半ばの男性だった。
偏見がましいけど、こんなところに来る客だし、彼女も奥さんもいない寂しい独身男性だろう。

さぁ、ヘルパーのはじまりだ。
元々、歳もいい歳だし、男性と会話するのは苦じゃないほうだった私だが、キャバクラという世界でどのような会話を繰り広げていいのかは、未知の世界だった。

「あ、あの〜、私、今日が初めてで、なにをどうしていいやら・・・」

「あーーー、そうなんだ!!僕ねぇ、このお店結構来るんだよねぇ。君みたいに体入のコがよく僕の席に着くんだよね(笑)」

「そうなんですかー」

「うんうん、常連客は体入のコが付きやすいんだよ(笑)」

メガネの男性は得意げにそう語った。

「なるほど!」

常連客ということもあるが、それ以上に話やすそうな人柄だから、お店側も体入のコが付けやすいのだろう。


「亜美ちゃんは、昼間仕事とかしてるの?」

「いえ、今はなにもしてないんです。ちょっと訳ありでお金なくなっちゃって稼がないといけなくて。でも、いつかは昼間の仕事に戻ろうかと・・・。」

「ほぉ〜、でも、夜の仕事って儲かるし、そう言って戻れなくてズルズルやってるコ結構知ってるからな〜(笑)」

「あはは、そうならないといいけど。でもまぁ歳も歳だし、そんなに長くはいられないかな〜って思ってマス。」

「だといいけどね〜(笑)」


(私はならないよ!)などと心の中で思いながら、その後も会社の”上司と会話するような感覚”で語り合った。
キャバ嬢の会話ってこんなんでいいのだろうかと思いながら。

時間がくると、ボーイさんが私を呼びに来た。指名の女の子と交代だ。
私は、ちゃんとヘルパーとしての役目を果たせたのだろうか、、、
そんなことを思いながら待機席に戻った瞬間、一息つく間もなく次のお客さんに付くよう、ボーイさんから指示された。

「んじゃ、今度あっちの席ね。あそこの席の人はー、▲▲ちゃんのご指名ね」

「はい!」

大きく返事をして、そのお客さんのところへと向かった。


「こんばんは、亜美です!」

挨拶を済ませ、手早くお酒を作りながら、軽く自己紹介した。
二十歳くらいの頃、とあるホテルのバーでアルバイトをしていたことがあったのと、元々、ウィスキー好きな私は、お酒を作るということでは戸惑わなかった。

その男性、30代前半。動物的直感というのか、経験上のものなのかはわからないが家庭を持つ男性の雰囲気があった。
つまり、男性の色気がないと言ってしまえば失礼だけど、どこか妙に落ち着いていて、それでいて、”女っ気のない寂しい独身男性”とも言えない感じに見えた。

私にとっては、彼が結婚している、していないはどうでもよいことだけど、今までどんな人生で、今、どのように生きているかを容姿や雰囲気から察っするのが水商売の基本じゃないかと、以前から思っていた。
しかし、それは容易いことではなく、容姿だけや一言二言会話しただけではなかなかわかるものではない。


「私、今日、はじめてなんです。」

と、とりあえず、初心者ぶりをアピールしてから、最初についたお客さんのように他愛もない会話でなんとか時間をつなぎとめる私がいた。

ところが、しばらく話し込んでいた時、


「〜〜そうなんですか。僕は今日▲▲ちゃんの指名で来たけど、なにせ、▲▲ちゃんはまだ18歳でしょう?僕、もう35歳だし、恋愛対象っていう感じではないんですよ。今日来たのだって、2ヶ月ぶりだし、それも、▲▲ちゃんにメールで毎日呼び出されてたんです。んで、まぁ、可愛らしい”娘”みたいな感じで、今日はイベントということもあって、来たわけです。・・・ですが、今日、亜美さんとお会いして・・・」

付き合っている男が女に言い訳するような感じで、彼は真剣な眼差しでそう語った。

「今日、亜美さんと話してて思ったんですが、とっても素敵な方ですね!また、色々とお話したいと思いました。歳も近いし・・・、▲▲ちゃんには申し訳ないけど、▲▲ちゃんがいなかったら、絶対、指名してます!!・・・・・いや、、、今度は、指名します。」

彼は常に丁寧語で、私に対する口説き文句を放つ。
(これってやばくない?)
指名の女の子差し置いて、私が気に入られてどうする・・・。
これはヘルパーの意味をなしてないどころか、妨害じゃない!?
それとも、こういうことって結構まれにあることなの!?
あるんだろうな・・・・。あるんだろうね・・・・。


それから何日かしてすぐに私はその事実というか、どうすることも出来ない悲しみや屈辱に襲われることになる。


体験入店したその日は3人のヘルパーになった。
お金はなし、当然あてがなかった私は、このお店でしばらく水商売をすることを決意したのであった。




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